後遺症による痛みなのか、それとも局所的な問題なのか
2年前に脳梗塞を患い、左顔面と左下肢に軽度の麻痺と左肩に強烈な痛みを訴える52歳の患者さん。感覚麻痺や運動麻痺、慢性痛が脳梗塞による後遺症なのか、それとも不動だった時期に関節や筋肉が膠着したことによる影響なのか、自分自身で正確に判断するのは容易ではありません。
この患者さんの場合は、左半身の麻痺を訴えていたので、まず左半身と右半身の違いを比較するために、スクリーニングテストと触診に時間をかけました。感覚麻痺や痛みを感じている部位を触診すると、深部にビーフジャーキーのように拘縮した組織や瘢痕が至るところにありました。
これらを丁寧に取り除いていくと、徐々に全身の過度な緊張が緩和していき、80分後には膝や股関節のモビリティが右半身と同じレベルまで回復。本人も痛みが消失して可動域が明確に改善したことに驚いていました。セッション後に歩いてもらうと、表情が柔和になって、歩行のフォームも大幅に改善されてスムーズになっていました。
2回目のセッションでは、左の五十肩にアプローチしました。肩関節周辺の痛みと痺れの原因を調べたところ、やはり深部組織が幾つもの問題がありました。オイルを肌に塗ってじっくりと深部組織にある塊を散らそうとすると、はじめは顔をしかめて痛がったいました。問題を起こしていた組織がほとんど消える頃には、痛みがるよりも痛気持ち良さを味わっているようでした。
3回目のセッションでは、頭部と頚肩部にアプローチしたのですが、これによりほぼ完全に肩関節の機能障害と痛みが消失しました。顔の浮腫もなくなり、表情が明るくなっています。本人も「周囲の人たちから変わったね!」と気づかれると言っていました。
脳梗塞の後遺症に悩まされている人は大勢います。愁訴が梗塞によるものなのか、それとも局所的な問題が原因なのか、それを自分で正確に判断することは容易ではありません。こういう場合は、検者が全身をくまなく触診して、深部組織の強張りや癒着、バンド状にかたまった筋組織などを探すことが大事なのです。
この患者さんの場合、左下肢の麻痺と強烈な痛みは、日頃の着座姿勢の悪さによって臀部と大腿部の筋肉が凝り固まっていることが影響していました。当然のことですが、そこにアプローチして循環障害を改善したら、主訴の症状は解消されました。
全員が同じ結果になるわけではありませんが、触診と深部組織の施術に時間をかければ、大半の痛みや強張り、麻痺は改善されていくのです。
そして、最後は歩行フォームのアップデート。歩き方が最適化されると、驚くほど心身のコンディションは変わります。
脳梗塞の後遺症でお悩みの方は、ぜひご相談ください。