27年ぶりに古巣ヴェルディを訪問しました。
9歳から20歳まで12年間所属したこのクラブで、人格形成の大部分がなされたと言えるくらい、多大な影響を受けました。
自分にとってあの経験は何だったのか、あまりにも大きなテーマで、未だに振り返って検証したことがありません。
左から藪田監督、佐伯コーチ、中村忠さん
前列左から2番目 佐伯 / 後列 右端藪田 当時18歳
今回の訪問目的は、ヴェルディユースの選手たちに日常生活における姿勢と身体の使い方の重要性についてレクチャーするためです。
学校や自宅でだらしない姿勢で長時間過ごしていると、ピッチに立ったときに正そうとしても、脳と体が従ってくれません。
日ごろの姿勢や体の使い方とのギャップが大きければ大きいほど、パフォーマンスに悪影響を及ぼし、スランプに陥ったり怪我したりするリスクが高くなります。
ゆえに、質の高いパフォーマンスを安定的に発揮したいと思うのであれば、普段からプレイしているときと同じ姿勢や動作フォームを心がけることが肝要です。
自分が引退してから学んだことや気づいたこと、「もっと早く知っていたら、もう少し選手として続けられたかもしれない」と悔やんだことをレクチャーしました。
深層心理レベルのケアを
ユースのレベルまで生き残ってきた子供達は、幼い頃から脚光を浴びて、親や周囲からの期待を一身に背負っています。
そのプレッシャーは経験した者しか理解できず、誰かと容易に共有することができません。だから、常に孤独感がつきまといます。
まだ精神面が未熟な頃に、絶望的な経験や大きなショックを受けると高い確率でトラウマになります。
私は48歳になった今でも、17歳の時に干されてサッカーを止めかけたときの夢を見ることがあります。目覚めたときに湧いてくる安堵感と寂寥感、喪失感は筆舌し難いものがあります。
普段は意識にのぼってきませんが、深層心理では深い傷跡が残っているようです。
トップレベルでしのぎを削っている子供や青年たちの中には、心に傷や闇を抱えている人が大勢いると思います。
プロスポーツの世界は華々しいですが、スポットライトの光が強ければ強いほど影が濃くなります。誰しも永遠にスポットライトを浴び続けることはできません。
影と闇に包まれたときに、どうやって気持ちを切り替え生きていくのか。そこから次のステージが始まるのです。
影になったら終わりではなく、今度は照明なんて当てられなくても、輝きを放てるように生きていくことだと思います。少なくとも自分はそうしてきたし、これからもそうしていくつもりでいます。
私が引退してからの2年間、どんな闇を潜り抜けて現在に至ったのか。笑えないけど笑うしかない経緯を子どもたちに話しました。
ローンの返済で必死に働いた日々や、文句言われるとブチ切れて暴れまくっていた話など、頭の悪いみっともないエピソードばかりです。
サッカーという決定的な武器とアイデンティティーを失ったとき、どういう心境や状況に陥りやすくなるのか、そんな話もしました。
どこまで真意が伝わったのか分かりませんが、視線が合った子どもたちの目は、とても真剣でした。おそらく、今まで聞いたことのない類の内容だったからでしょう。
過酷な環境で育った子供たちは、タフで優れていますが、そうは言っても心はまだ脆いもの。
子どもたちの目の奥を覗き込むと、将来への漠然とした不安や恐れが垣間見えた気がします。
これを機に、スポーツ強豪校の「駒」として使い捨てにされた青年や、プロになる夢を追いかけて挫折した青年たちとディスカッションする機会を増やしていきたいと思いました。
仮にスポーツの世界で可能性が断たれたとしても、他の分野で活躍するポテンシャルと可能性をもっているはずたから。