〜椅子が怖い〜
「椅子に座ると腰が痛くなる」「座っていると尻から太ももの辺りが痺れてくる」「立ち仕事に転職しなければいけない」
「腰が痛くならない椅子を見つけたい」
椅子に座ることが苦痛でも、椅子に座らずに生活をすることはできません。だから、椅子と腰痛で悩んでいる人が後を絶たないのです。これは日本だけの問題ではなく、世界共通の問題です。
「椅子が怖い 腰痛放浪記」 夏樹静子著(新潮文庫)には、著者の経験を通して座ることへの不安と苦痛がリアルに描かれています。
椅子と上手に付き合っていく為には、最適な椅子と机の選び方、効率的な座り方を身につけることが大変重要です。
〜腰痛のメカニズムと〜
腰痛症には、代表的なパターンがあります。
①立っているとき ②座っているとき ③歩いているとき ④仰向けに寝ているとき ⑤屈んでいるとき ⑥起床直後 ⑦運動後 ⑧物を持ち上げた後 ⑨心配事が重なったとき
現代人は長時間座っている人が多いため、座っているときや立ち上がった後に腰の痛みを訴える人が大勢います。
そもそも骨盤の形状は座ることに向いていません。その上、座っているときは上半身の重さ(体重の約60%)が腰部に集中するので、着座姿勢が悪いと腰痛になりやすのです。
骨盤が後傾して猫背になると腰部の筋・筋膜、靭帯、椎間板へのストレスが著しく増加します。不良な姿勢が常態化すると、これらの組織に微細なダメージが蓄積して変性や変形が起きます。また、筋組織に疲労が蓄積して繊維が硬化すると筋肉の内圧が高まり、血管や神経が圧迫されて虚血性の痛みが起きやすくなります。運動器の痛みや痺れの多くは、パンパンに張って硬くなった筋肉が原因と言っても過言ではありません。
長い間、放置しておくと閾値レベル(痛みの感度)とストレス耐性が低下していきます。その結果、昔はなんともなかった動作でも、痛みや違和感を感じるようになるのです。強い痛みを経験すると、脳が過度な防衛反応を起こし、患部周辺を硬直させて動かないようにします。痛みを抱えていると、ロボットみたいな動きになってしまうのは、こうした理由からです。
痛みを避ける代償的な姿勢や動作パターンが一過性であれば問題ないのですが、定着すると元の状態に戻れなくなってしまいます。ですから、痛みをコントロールできる範囲内で、正しい姿勢や動作パターンを再学習することが重要なのです。
~座るから腰痛になる〜
椅子に座らざるを得ない人はどうすれば良いのか。結論から言うと、座らずに腰掛けて暮らすようにすれば良いのです。座るから腰痛になるが、腰掛ければ腰痛にならない。これは普遍的な事実です。座面が低い椅子に座るから骨盤が後傾して、猫背になるのです。習慣的な猫背は万病の元。
一方、膝よりも股関節の位置が高くなる椅子に腰掛ければ、自ずと骨盤が立って腰椎に自然なアーチが生まれます。さらに、座面の先端に腰掛ければ(端座)踵で地面を捉えることができ、足裏で全身を支えられるようになります。それから足を前後に開くか左右に開脚すれば、骨盤が立って理想的な着座姿勢にセットアップされるのです。
座り方のフォーム(型)については別の機会にご紹介しますが、とにかく腰掛けて開脚すれば腰痛になるリスクは極めて小さくなります。机に関して言えば、昇降式の机を選ぶのがベストです。
立って作業→腰掛けて作業→立って作業→腰掛けて作業。こういうルーティンを守っていれば、長時間のデスクワークでも心身への負担を大幅に減らすことができるのです。
〜本気で椅子を探す人に薦めたい〜
先日、多種多様な椅子を販売している「ワーカーホリック」でセミナーを開催してきました。対象者は、ワーカホリックのチェア・コンシェルジュたちです。
ここまで椅子と真剣に向き合っている人たちも珍しいと思います。椅子道場と呼ぶのが相応しいかも知れません。チェアコンシェルジュたちが切磋琢磨し、レベルアップを図っている姿に関心しました。
デスクワーカーの身体的な負担を軽減し、仕事に没頭できる環境(特に椅子)を勧めることが彼らの役割。多くの参加者が着座姿勢に関する疑問を次々と投げかけてきました。
基本的に私は、座面の先端に座ることを勧めているのですが、彼らは座面の奥に座って背もたれに寄りかかった状態で仕事をすることをお客様に推奨していました。
「どちらか一方に偏ることなく、意識的に座る位置を変えることが望ましい」と伝えました。頭でっかちにならないように、皆さんには色々な座り方を実践してもらいました。最も時間をかけたのは、「骨盤を立てて骨で座ること」です。
始めは堅かった部屋の空気も、次第に和らいでいきました。レクが終わった後、コンシェルジュのリーダーが皆を集めて「自分たちの考えとお客様に勧めてきた事は間違っていなかった。今日はその事がはっきりして良かった」と、熱く語る姿が印象的でした。
真剣に自分に合う椅子を求めている方は、ぜひワーカーホリックにお問合せください。チェア・コンシェルジュたちは、腰痛症や椅子に対する私の考え方も理解してくれています。昔からお店や商品の宣伝はしてきませんでしたが、彼らの熱意と知識は、椅子選びで悩んでいる人たちの助けになるはずです。