MARO'S
伊藤和磨ブログ

『怪我や故障の経験が今に活きる』伊藤和磨の言葉

Maro’sには、精密検査で原因がわからなかった人や手術を勧められている人、術後に再発した人、怪我や脳梗塞の後遺症に苦しんでいる人、うつ病の人たちなど、治療院を渡り歩いても症状が改善しなかった人たちが、メディアや書籍、口コミを通じて全国各地からやってきます。当院代表を務める私自身も、サッカー選手だった頃から今日までに怪我や故障で、あちこちの病院(整形外科)や治療院に通ってきました。

脛骨内果骨折、下顎骨折、頚椎椎間関節骨折、肘関節内側靱帯断裂、膝関節内側側副靱帯断裂、大内転筋肉離れ、薬指の剥離骨折、母趾脱臼、肩関節亜脱臼、腰部椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛など、故障していない部位のほうが少ないくらいです。

 持病の椎間板ヘルニアが悪化して重度の坐骨神経痛になったときは、お尻とふくらはぎを犬に噛まれているような激痛で、1分間立っていることも100m歩き続けることもできなくなりました。あちこちの医療機関を経て、最後に信濃町にあるK大学病院で精密検査を受けたところ、腰椎の椎体と椎間板が全て変質していました。それは自分でも驚くほど酷い状態で、80〜90歳くらいの人より構造的に劣化していたのです。

健常者の腰椎と椎間板

健常者の椎間板

私の腰椎と椎間板

私の椎間板

担当してくれたのは著名な教授でしたが、「よくこんな状態で運動できますね。今後は筋トレやジョギングは止めた方が良いです」と呆れていました。それまで腰痛の専門家としてメディアに露出してきましたが、このときに初めて腰痛が悪化すると腰が痛いのではく、脚が痛くなることを体験的に理解しました。

こういった怪我や故障の経験は苦いものでしたが、トレーナーとして仕事をするうえでは非常に役立っています。医学書や論文を読み漁って知識を詰め込んでも、実際にその症状を体験してみなければ、他人の苦痛を理解したり最短で治す方法をイメージしたりできないからです。

『人生を変えた出会い』

 私が初めて腰痛を経験したのは16歳のときでした。それ以来、常に腰痛を抱えていましたが、19歳の頃から急激に悪化して1年に4回もギックリ腰になったのです。21歳でサッカー選手を引退したのですが、その頃は、30分間座っているのも苦痛でした。

その後、さまざまな職種に就きましたが、腰痛から解放されることはありませんでした。そんなとき、ジェフ・ライベングッドというアメリカ人のトレーナーと出会ったのです。ジェフのもとには、病院では原因がわからなかった重い症状に苦しむ患者たちが、次々と押し寄せてきました。相当に具合が悪い患者を前にしても怯むことなく、多角的に調べ上げて原因を突き止める姿に畏敬の念を抱きました。

ジェフが見ている世界は、それまで私が経験してきたものとは異次元のレベルでした。ある日、私が長年腰痛に苦しんできた話をすると、全身の状態と動作パターンを丁寧に診てくれました。彼の説明を聞いたとき、「もっと早く出会っていたら、今もサッカーを続けていたかも知れない」と悔やむと同時に、「こうやって人を助けられる人材になりたい」と強く思いました。

ジェフと出会っていなかったら、間違いなく今の私はありません。「こういう時に、あいつならどうするだろうか」と思うことが多々あります。

『整形外科医に対する不満からトレーナーに』

「何時間も待って診察はたったの3分だった」、「触診せずに写真だけみて手術を勧められた」「手術しないなら何もやることがないと言われた」、「歳だから仕方がないと言われた」、「毎回湿布と痛み止めをもらうだけ」。

 これまで整形外科を受診してきた方が、こういった不満を口にするのを何百回もみてきました。私も整形外科と理学療法室で、これでもかと言うほど残念な経験をしてきました。「椅子に座ったままで身体にも触れず、一体何がわかるの?ちゃんと診てくれよ」と、診察を受けるたびにそう思っていました。一般的に〇〇の名医と称されている医師は、外科的手術が上手な医師のことであり、総合的に身体をみて診断し、自力で改善する方法を教えてくれる医師のことではありません。

 運動器の問題は、①普段どのような姿勢で過ごしているのか ②どのような動作パターンを繰り返しているのか③どんな呼吸パターンなのか④どのような歩き方をしているのか。これら4点を把握できれば、物理的な負担が集中する部位が明らかになるため、根本的な原因と改善するための道筋が描けるのです。

 しかしながら、今日までこれらの質問やテストをする医師に、一度も出会ったことがありませんし、患者さんたちからも聞いたことがありません。腰が痛いと言えば腰部しか診ず、首が痛いと言えば頚部しかチェックしない。そういう医師ばかりです。

 リハビリに関しても納得のいくレベルではありません。反論を恐れずに言わしてもらえば、保険点数を稼ぐためにやっているとしか思えないものばかりです。例えば、腰痛に対して低周波治療や牽引をしても気休めにしかなりません。湿布も同じです。れなのに、何ヶ月経っても同じ療法を続けるのです。

シニアにとっては理学療法室が憩いの場になるのかも知れませんが、仕事の合間に通っている身としては、「こんなことやって治せると本気で思っているの?」と、腹が立ってきます。

 世間には、筋トレをして筋力をつけたり、ストレッチで柔軟性を高めたりすれば、運動機能が向上して健康になれると考えている医師や専門家が大勢います。また、「膝痛の改善には、太ももの筋肉を鍛えると良い」「腰痛改善には腹筋運動」といった根拠のない考え方も広まっています。

 しかし、一部分をトレーニングしても、運動機能が向上したり痛みが改善したりすることは期待できません。このような足し算的なアプローチ(還元的アプローチ)よりも、姿勢や運動を制御している脳神経をアップデートさせる統合的アプローチの方が、短時間で永続的な成果をもたらすのです。

 色々な経験を経て「ちゃんと診てくれる場所をつくろう」と思い立ち、2002年に腰痛改善スタジオMaro’sを開業しました。そして、「日本から腰痛をなくす」というスローガンを掲げ、それを実現させるために書籍を出版したり学校や企業で講演したりして、教育で予防することの大切さを啓発してきました。

『多くの痛みは画像に写らない』

 骨や関節、椎間板、半月板などの変性・変形が元で生じる問題(痛みや痺れ)は約20%で、筋・筋膜や腱、靭帯などの組織の炎症や癒着などで生じる問題は約80%といわれています。つまり、画像に構造的な異常が認められたとしても、それが痛みや痺れの原因である確率は20%程度だということです。

 実際、突出した椎間板が神経を圧迫している様子が写っているのに、神経症状が全く表れない人もいれば、画像所見で異常がないのに、激しい痛みや痺れに悩まされている人も大勢います。

 なんらかの異常が画像で認められた方が診断をつけやすいのですが、なにも異常がないと診断がつけ難くなってしまいます。こういうケースこそ、触診して病巣を探せばよいのですが、昨今の医師は患者に触れないため、曖昧なことしか言えなくなります。

「変形膝関節症」「椎間板ヘルニア」「脊柱管狭窄症」「脊椎すべり症」…。こういう診断名をつけられると、「自分の身体は問題を抱えているんだ」と弱気になってしまうものですが、50歳も過ぎれば誰でも骨や関節、椎間板、半月板などが変形しているのです。ですから、画像検査の結果が思わしくなくても、怖がる必要はありません。

 凡庸な医師は、やたらとストレスや加齢、オーバーウェイト、関節や骨、椎間板、半月板の変形のせいにしたがります。仮に、肩関節や膝関節、股関節などに構造的な問題があったとしても、こまめに関節と周辺の組織をケア(オーバーホール)していけば、ほとんどの痛みや機能障害は改善可能なのです。

『不要な手術』

 最も避けたいのは、画像所見だけで手術が必要と勧められて、不要な手術をしてしまうことです。メスを入れてしまったら、完全に元の状態に戻ることはありません。

 これまで術後に再発したという患者さんをたくさん診てきました。「手術が失敗だった」と嘆く方や「手術なんてしなければよかった」と後悔されている方もいます。私に言わせれば成功か失敗というよりも、そもそも手術する必要であったのかということです。

そういう患者さんに様々な機能テストや時間をかけて触診してみると、果たして手術は必要なかったという答えに辿り着くケースが9割以上です。本人はがっかりしますが。痛みや関節の機能障害が長引くと、誰だって手術で楽になりたいと思うものです。私も坐骨神経痛で苦しんだときは、椎間板ヘルニアを除去して楽になりたいと願いました。

 しかし、メスを入れるということは簡単なことではなく、期待通りの状態になれる確率は思っているほど高くないのです。

 私がトレーナーになってからの24年間、手術を勧められている437名以上の患者さんを診てきました。そのうち、実際に手術を受けた人は6名のみです。残りの方は手術を回避しています。

このような結果に至ったのは偶然ではなく、以下の3つの要素が重なったからだと思います。

 画像所見だけで手術が必要と判断した医師のミス

 触診で病巣を特定し、問題の組織を正常化させるまでアプローチした 

 姿勢や呼吸パターン、歩行フォーム、日常動作を最適化した

画像診断機器で特定できない極小のしこり=病巣を指先で特定して、それを着実に散らすのが私の特技の一つです。このセンスと技術においては、国内で同レベルの治療家をみつけるのは簡単ではないと自負しています。 

触診でみつけた組織が何であるかを判断し、それが周辺の組織と同化するまで丁寧に指先で整えていきます。トリガーポイント、癒着した筋膜、硬化した滑液包、変形した半月板、関節ねずみ、過度に緊張している筋肉、ガングリオンなど、組織の状態によってアプローチを変えます。

場合によっては、数ミリの組織に対して1時間近くかけて処置することもあります。そこまで徹底するのは、効果を一時的な「反応」で終わらせないためです。組織が「変化」するまで続けると、想像以上の結果につながります。

「そこが原因だったとは」「まさか治ると思わなかった」「今までの治療はなんだったんだろう」「再手術かと思っていたけれど止めます」といった感想を耳にすると、さらにやる気が湧いてくるのです。

 手術を考えている方や術後の状態が芳しくない方は、ぜひお気軽にご相談ください。他では得られなかったヒントが見つかるはずです。

『Maro’sの理想的なゴール』

 現代社会は、一日中椅子に座りっぱなしで呼吸が浅い人、ゾンビのように腕を垂らして歩く人たちで埋め尽くされています。私たちは誰からも座り方や呼吸の仕方、歩き方を教わったことがないため、気付かぬうちに健康を蝕む悪癖やパターンが染み付いてしまっているのです。

 治療によって痛みと機能障害が改善してきたら、すぐさま呼吸や姿勢、歩き方、屈むフォーム、しゃがむフォームを最適化するためのトレーニングを始めます。(治療の前に呼吸に介入することも)

これらの機能に一つでもエラーがあると、再発リスクをゼロにできないからです。呼吸と姿勢、痛みの感じ方には、密接な繋がりがあります。慢性的な頭痛や頚肩部痛、肩関節の障害、腰痛症、股関節疾患を患っている人は、ほぼ例外なく呼吸パターンに問題を抱えています。

 呼吸を改善することは、すなわちフィジカルとメンタルを改善することになり、慢性痛の緩和やうつ病やパニック症の改善にも繋がるのです。

このように、Maro’sの強みは徒手療法だけでなく、脳に刷り込まれた姿勢と運動制御のプログラムをアップデートし、再発しない丈夫な身体づくりを最後までサポートすることです。理想的なゴールは、患者さんの自立を促して一人で何でもできるようになっていただくことです。

 当たり前にやってきたこと(基礎)を見直すのは、何歳であっても大切なことです。良いことを始めるのに遅すぎることはありません。ご縁があれば、一緒に心身の状態を立て直し、健康だった頃の自分を取り戻しませんか?

Maro’s代表 伊藤和磨