不良な姿勢で毎日何時間も椅子に座っている人や視覚の機能低下、上胸部で息を吸おうとする誤った呼吸パターンの定着、首と上肢を極端に動かさない生活は、頚肩部の慢性痛や関節の機能障害を罹患するリスクが高まります。
脳は、痛みがある部位を無意識に動かさないようにするため、患部の組織が萎縮したり癒着したりして状態を悪化させます。痛みを避けた姿勢や動作パターンが定着すると、他の部位に負担がかかって問題が飛び火していきます。
頚肩部に問題を抱えている人の多くは、猫背や側彎した状態で毎日何時間も暮らしています。不良な姿勢は、肩甲骨をあるべき場所から逸脱させるため、頚肩部や肩関節の筋肉や靭帯、腱のテンションに不均衡が生じて、頚椎の関節や肩関節が不安定になります。
また、呼吸と姿勢、痛みの感じ方には相関性があり、浅い呼吸パターンが定着している人は、交感神経が過活動を起こした状態に陥りやすくなります。交感神経優位の状態は、無意識のうちに全身の筋肉を緊張させ、頭痛や頚肩部の痛み、痺れを増悪させます。
頚肩部の問題を改善するには、肩甲骨の位置を最適化する必要があるのですが、そのためには猫背や胸を張りすぎた姿勢を改善する他に、呼吸パターンを最適化することが重要です。
横隔膜呼吸や胸郭の背面を拡張して息を吸う感覚を修得すれば、胸郭の形状が変化して肩甲骨が本来の位置に収まります。また、こまめに肩甲骨のリポジショニングを行う習慣をつけることにより、肩関節の機能だけでなく四十肩や五十肩、夜間痛、ストレートネックなどの改善に大きな効果があります。
頚部や肩甲骨周辺、肩などに痛みや痺れを放散させるトリガーポイント(筋膜にできるしこり)がある場合は、ダイレクトにアプローチして散らしていきます。これにより、不快な症状が消失して可動域が大幅に改善されます。
誰もが一度は経験すると言われる腰痛症ですが、その原因は複合的であり腰部単独で生じることは滅多にありません。腰部に負担をかける偏った姿勢(着座姿勢を含む)や浅い呼吸、だらしない歩き方、間違った屈み方、持ち上げ方の繰り返しによって、徐々に腰部の組織が蝕まれていき、ある日のある動作を契機に発症するのです。
慢性腰痛を罹患している人の上肢と下肢をチェックすると、一部の筋肉が短縮したり癒着したりして硬くなっており、それぞれの関節が正常な位置から逸脱して、運動機能が大幅に低下していることがわかります。
上肢下肢の筋肉に疲労が蓄積して、足部や膝部、股関節のアライメントが崩れて協調的に動けなくなると、臀部やそけい部、腰部にかかる負担が劇的に増します。ですから、上肢と下肢のアライメントと機能を回復させることが、腰痛症を根本解決するうえで不可欠なのです。実際、上下肢のコンディションが改善されると、背腰部の痛みや痺れ、強張りが自然と消失していきます。
仙骨周辺が痛む仙腸関節痛は、腰痛症全体の約4割を占めているのですが、この症状は股関節筋が凝り固まって、仙骨と寛骨を支えている靭帯と関節に大きな負担がかかることによって発症リスクが高まります。
多くの人は、腰部の痛みを自覚すると「腰が悪い」と考えます。しかしながら、腰部は犯人ではなく被害者に過ぎません。
着座姿勢や偏ったカバンの掛け方、間違った屈み方、非公理な歩き方、背中を丸めた中腰姿勢こそが、腰部を蝕み続けている加害者=真犯人なのです。腰部だけ治療していたのでは、いつまで経っても根本解決には至らないわけです
腰痛症を根本から改善するには、レントゲンやMRIには描写できないトリガーポイントや筋膜の癒着、靭帯のこわばりを徒手療法で取り除き、痛みや感覚異常を改善するのと同時に、最適な姿勢、呼吸、歩行、動作パターンを身につけることが肝要です。
巷には、やたらに椎間板ヘルニアや狭窄症、関節の変形のせいにする医師で溢れかえっています。しかしながら、これら器質・構造的な変形や変性が主訴の原因である確率は20%に過ぎないと言われています。不必要な手術をして症状が改善しないのは、不思議なことではありません。
MARO’Sでは、これまで手術を勧められている患者さんや術後に再発した数多の患者さんたちを診てきましたが、誰もが「手術は必要なかった」と悔いています。手術を検討されている方は、ぜひご相談ください。
足の形にあっていない靴を長期間履いている人、ハイヒールを常用している人、頻繁に正座をする人、下を向いて階段を昇降している人、しゃがみ方のフォームが間違っている人、座っているときに内股で座っている人、スポーツのフォームに問題がある人に膝痛が起こりやすいと言えます。
足部と股関節のアライメントと機能的な問題が、膝の機能障害と痛みを誘発させているケースが非常に多くあります。
膝の痛みや機能障害は、下腿部や大腿部の筋肉に形成されたトリガーポイントや筋膜と靭帯の癒着、筋肉の硬化が引き金となって発症します。
その他、レントゲンやMRIなどの画像検査機器では写し出すことができない、極小のしこりが膝蓋骨の周辺に形成されて痛みを出している場合もあります。
下肢全体の筋肉のコンディショニングと同時に、膝関節をくまなく触診して極小のしこりを散らすことによって、強烈な膝の痛みや機能障害を改善させます。
MARO’Sでは膝のオーバーホールと呼んでいるのですが、片膝に40分以上かけて点在する小さなしこり(炎症によって浸潤した組織液が固まったもの)を丁寧に散らしていきます。施術後は、潤滑油を射したように膝をスムーズに動かせるようになります。
歩行と階段昇降、しゃがむ動作を修正して、膝の負担を分散する身体の使い方を修得できるまで何度も繰り返し練習します。
画像検査の所見だけで半月板の手術を勧めてくる医師が大勢いますが、画像検査機器では写し出せない極小のしこりが原因である場合、当然手術をしても根本から改善することはありません。
安直にメスをいれるよりも、点在するしこりを徒手療法でじっくりと散らしていくことを強くお勧めします。
頭頚部の痛みは主に関節や靱帯の変形・変性や、靭帯および筋肉の凝りによって生じるケースが多いと考えられています。
後頭下筋群は、頭部の位置を安定させ、視覚を水平に保つために頷いたり頭を傾げたりする役割を担っています。
運動機能の他に視覚機能もサポートしています。パソコンやスマホの画面を凝視すると、後頭下筋群(こうとうかきんぐん=後頭骨と第1〜2頚椎に付着する小さな筋肉)が緊張して硬くなります。
デスクワークやスマホの操作をしているときに、アゴが上がり頭部が垂れ下がっている人が大勢いるのですが、この不良姿勢が定着すると後頭下筋群が凝り固まってしまい、上記のような症状を引き起こす場合があります。
一般的な整形外科、眼科、脳神経外科で受診しても、後頭下筋群の機能不全を疑う医師はほとんどいません。故に、この部位の問題が見落とされてしまうケースが多く、心療内科を勧められるケースも少なくありません。後頭下筋群の機能不全が原因で起きる
頚性うつは、この筋肉に対して直接的にアプローチすることで、大幅に改善することができます。
問診と機能テスト、触診で不調の原因と部位を特定していきます。主訴の原因が頭部や顔面の筋肉の凝りであれば、徒手療法によって速やかに緩和することができます。
一方、病巣が後頭下筋群の凝りである場合は、肋骨を下げて息を吐く方法をレクチャーして、交感神経の活動を抑制し筋肉を弛緩させます。次に、じっくりと時間をかけて指先で浮腫みと強張りを取り除いていきます。
コンディションにもよりますが、だいたい30〜40分程度で後頭下筋群の機能が回復し、様々な不調が大幅に改善されるはずです。
また再発を防止するために、アゴを引いた姿勢を保つための環境設定や運動療法(首前面のセルフマッサージとストレッチ、ビジョントレーニング、呼吸、踵から着地する歩行フォーム、アゴを引く運動)を指導します。
後頭下筋群の機能不全によって生じる問題は、放置しておくと心身症につながるリスクが高いため、できるだけ早めに対処することが重要だと考えています。
多くの人は日常生活において、首を回旋させたり頭上に手を伸ばしたり、肩関節を最大限に回す機会が限られています。関節や筋肉は、いつも同じ位置で固定されたり同じ方向に動かさなかったりすると、不具合を起こすようになります。
また、日本人は腕を振って歩く人が極めて少なく、これが頚肩部や上肢に多大な悪影響を及ぼしています。
一般的に、酷使されている部位よりも固定されている部位のほうが、様々なトラブルを起こすリスクが高まります。肩関節の問題も例外ではなく、日頃から動かさないでいることが最大の原因になります。
一方、手首や手指の問題は使い過ぎによる筋肉や腱の硬化が、直接的な原因となるケースが多くなります。
上肢の機能と状態は体幹部に大きな影響を与えるため、問題を放置しておくと頚肩部痛や腰痛の引き金となります。
立位と着座姿勢の見直し、呼吸パターンへの介入、腕を振って歩く習慣づけ、上肢の筋肉や腱、靭帯に形成されたトリガーポイントへのアプローチによって、上肢の痛みや関節の機能障害の改善を図ります。
呼吸パターンが改善されると胸椎と胸郭の可動性が向上し、上体を起こしやすくなります。これにより肩甲骨を理想的な位置におさめやすくなり、肩関節を安定して動かせるようになります。
また、指先を伸ばして肘を固定し、肩の付け根から腕を振る感覚を落とし込めれば、頚肩部と上肢の問題は驚くほど早く改善していきます。
どの部位にも当てはまることですが、単一の関節や筋肉にアプローチするよりも、身体全体を効率的かつ協調的に動かす練習をした方が、再発のリスクを軽減することに繋がるのです。
股関節の問題も単独で生じることは滅多にありません。この関節に問題が生じる主な原因として挙げられるのは、座面の低い椅子に
長時間座る生活、いつも同じ脚に体重をのせての作業、股関節の特性を活かせない非効率な歩き方、足関節と膝関節のアライメントと不良などです。
股関節の機能不全や痛みは、そけい部(太ももの付け根)周辺の筋群(主に腸腰筋と内転筋群)の硬化や癒着が原因で起きるケースが多いと言えます。裏返せば、ここのコンディショニングをしっかりと行い、股関節のモビリティを再獲得することができれば、医師から股関節の置換術を勧められている方でも、手術なしで普通に暮らせるようになる場合が非常に多いのです。
下肢全体の筋肉にアプローチして緩めていくと、足関節ー膝関節ー股関節の血流が良くなって可動域と動きの質が大幅に改善されます。
特に腹部の深部にある腸腰筋(ちょうようきん)を緩めてこの筋肉の循環を回復させることが重要です。これだけで股関節の痛みと違和感を和らげることができるからです。
デスクワーカーは、膝よりも股関節の位置が高くなるように座面の高さを設定し、股関節の負担を軽減することが大切です。
また、膝を畳んで歩くフォームを修得すると、歩行時の股関節の負担が減って再発リスクの低減につながります。
人体のおいて、足底は車のタイヤと同じ役割をになっているため、足裏の筋肉や腱などが硬化して機能低下すると、全ての運動に悪影響を及ぼします。年をとってバランスを崩しやすくなり、歩幅が極端に小さくなってしまうのは、この足底の機能低下が関係しているのです。
足部に問題の多くは、足の形状に合わない靴を履いることに起因しています。そして、足部を使わずにペタペタ歩いていることも原因の一つとして挙げられます。
足底と足部のアライメントや機能は、膝や股関節、腰部のコンディションに影響を及ぼします。病院では局所しか診てもらえないケースが多いので、足部を機能をチェックされることは殆どありませんが、あらゆる問題はこの部位に起因していると言っても過言ではないのです。
ドイツ製の足底分圧計測器を使って、静止した状態と歩行中の足部の機能を客観的に測ります。これはMARO’Sにしかない機器であり、とても有益な情報を得ることができます。
測定結果を元にして、足底や下腿、膝窩までくまなく触診していき、強張りや癒着している組織があれば周辺の組織と同化するまで徒手療法で緩めていきます。
施術で痛みや強張りを改善した後、立位と歩行、しゃがみ動作における効率的な足部の使い方を練習し、足部のロッキングチェア機構を活かせるようにします。
足部のコンディションが向上すると膝と股関節のモビリティが格段に向上し、姿勢筋の過度な緊張が抑制されて全身の動きが滑らかになります。